UA(ユニバーサルアナリティクス、旧GA)は2012年10月31日にβ版が発表されたあと、2014年4月3日に正式なリリースとなりました。Googleアナリティクスと比較して、設定が簡単になり計測できる項目が増えることから、より効率的にWEBの解析ができるようになりました。
GA4(Google アナリティクス4)がリリースされたあとも、まだGA4の機能が十分でなかったこともあり、UAは高い需要を誇っていました。しかし、Googleは2022年3月16日に、UAは2023年7月1日に終了すると発表しました。
GA4が今後、Googleが運営するアクセス解析ツールとなります。UAが終了するのにはさまざまな理由があります。
UA(ユニバーサルアナリティクス)終了発表
2022年3月16日にGoogleはUA(ユニバーサルアナリティクス)のサービスを、2023年7月1日に終了すると発表しました。
この記事では、2023 年 7 月 1 日(アナリティクス 360 プロパティの場合は 2023 年 10 月 1 日)をもってデータ処理が停止されるユニバーサル アナリティクス プロパティについて説明します。まだ使用していない場合は、Google アナリティクス 4 プロパティの使用を開始してください。
Googleでは、UAは2023年7月1日にデータ処理が停止されると明言しています。
GA4への完全移行の準備
Googleでは、今後の流れを以下のように説明しています。
- ・2023 年 7 月 1 日までは、引き続きユニバーサル アナリティクス プロパティで新しいデータを使用および収集できます。
- ・2023 年 7 月 1 日以降は、この日よりも前にユニバーサル アナリティクス プロパティで処理されたデータに、少なくとも 6 か月間アクセスできます。Google は、お客様のデータが重要であることを認識しております。この機会に過去のレポートをエクスポートすることを強くおすすめします。
- ・数か月以内に、既存のユニバーサル アナリティクス プロパティのサポート終了日についてお知らせする予定です。サポート終了日を過ぎると、ユニバーサル アナリティクスのレポートをアナリティクスの管理画面で確認したり、API を介してユニバーサル アナリティクスのデータにアクセスしたりできなくなります。
2023年7月まではUAにおいてデータの収集ができます。しかし、UAのデータをそのままGA4に移行することはできないため、UAでの過去のレポートをエクスポートする必要があります。
また、UAのサポート終了日が数か月以内に発表されます。サポートが終了するとUAのレポートを確認できなくなるので早めにGA4に切り替える必要があります。
Googleでも以下のように、Googleアナリティクス4に切り替えることをおすすめしています。
Google アナリティクス 4 は、現在だけでなく将来的な測定ニーズにも対応できる十分な機能を備えています。先日発表いたしましたとおり、ユニバーサル アナリティクスはご利用いただけなくなります。そのため、できるだけお早めに Google アナリティクス 4 に切り替えていただくことをおすすめします。
GA4を早めに利用するべき理由
UAとGA4は使い方や目的、特徴などがまったく違います。別のツールといってもいいくらいなので、GA4に慣れるためにも早めにGA4の利用を開始することをおすすめします。
Googleアナリティクス360は2023年10月1日まで利用可能
UAの有料版であるGoogleアナリティクス360は、2023年10月1日まで利用可能することができます。
UAのデータ収集が終了する理由
UAのデータ収集が終了するのには、以下のような理由があります。
- Cookieを利用してサイト計測をされていた
- Cookieの危険性
- Cookieが取得できなくなる
- Cookieを利用したサイト計測は精度が落ちる
- イベントごとの計測の必要性が高まった
Cookieを利用してサイト計測をされていた
Cookie(クッキー)はWEBサイトを見るときにWEBサーバーから送られるテキストファイルであり、それぞれのサイトにログインしたときのIDやパスワードなど、情報が蓄積されています。
次にWEBサイトを開いたときに、テキストファイルをデバイスからWEBサーバーに送信します。こうすることで前回開いていたログインをはじめとした情報が残ることになります。
UAでもCookieを利用することでPVやページ内での行動などのサイト計測をしていました。
Cookieの危険性
このように便利なCookieでしたが、Cookieを狙うサイバー攻撃が増えています。ログイン情報や会員登録情報などが記憶されることから、個人情報が抜き取られるケースが増えたのです。
ショッピングサイトにてカートに商品を入れた状態で、ページを閉じてもまだ商品が残っているのはこのCookieの働きです。ユーザーからすると一度入力した情報をもう一度入力しなおす必要はなく便利な機能であり、ショッピングサイトの運営者からするとユーザーの行動を確認することができます。
Cookieは便利な機能なのですが、半面大きな危険性があります。特に個人情報やクレジットカード情報を共有デバイスのCookieに保存をしたままにすると、次にそのデバイスを使う人は簡単に情報を悪用することができます。
また、CookieはTracking Cookieとよばれ、アクセス履歴を見つけることができます。サイト以外にも画像の閲覧履歴も追跡することができることから、個人情報の漏洩に繋がることがあります。
さらに悪用の可能性があるのはセッションハイジャックです。セクションのIDを盗むことにより、本人になりすましてショッピングサイトなどにログインをしクレジットカードやオンラインバンクなどの情報などを盗むことができます。セクションハイジャックをされてしまうと、さまざまな被害につながり危険な状態になります。
Cookieを利用したサイト計測は精度が落ちる
Cookieを利用したサイト測定は、危険性があるだけでなく精度が落ちることもUAの大きな課題でした。スマートフォン、タブレット端末の普及率が高まったことからCookieだけで正確な計測ができなくなったのが1点です。
次に個人情報に関する取り締まりが厳しくなったことから、Cookieに依存しているWEBサイトが減ったことが挙げられます。このようなことから、ユーザーごとの計測方法が必要になりました。
イベントごとの計測の必要性が高まった
UAではCookieを利用して、セッションごとの計測をおこなっていました。しかし、スマートフォンやタブレット端末など複数の端末を使うことによりユーザーごとの計測方法が必要になりました。さらに個人情報対策により、Cookieに依存する企業が減ったこともユーザーごとに計測が必要になった理由です。
UAではWEBサイトのページごとにデータを計測していたのですが、スマートフォンのページやアプリなどページビューの概念が変化しています。これらのことから、ユーザーごとの計測をすることができるGA4の需要が高まりました。
UAのデータ収集が終了する社会的変化
UAの利用が終了する理由として、以下のような社会的変化があります。
- スマートフォンの普及
- 複数デバイスを持つユーザーの増加
スマートフォンの普及
近年、世界中においてスマートフォンの普及率が高まっています。
2012年から10年間でスマートフォンのユーザーは、2012年にはおよそ10億人だったのが2021年には約40億人と約4倍になっています。2021年の世界人口は約80億人であることから、2人に1人はスマートフォンを利用していることになります。
画像出典:Phones By The Numbers:22 Surprising Smartphone Statistics(CellPhoneDeal)
2030年にはスマートフォンユーザーは2030年には50億人を超えることになります。つまりパソコンとスマートフォンの両方を利用しているユーザーが多く、それぞれを測定していたのでは正確な分析ができない傾向にあります。
複数デバイスを持つユーザーの増加
近年スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなど複数デバイスを使うユーザーが増えています。令和2年に総務省が発表している通信利用動向調査によると、2011年〜2022年の日本におけるモバイル端末の利用状況では、パソコンの2011年の利用率は約80%だったのが2022年には70.1%、固定電話にいたっては2011年に85%だったのが2022年には68.1%と激減しています。
一方、スマートフォンの利用率は2011年には約30%だったのが、2022年には86.8%、タブレット型端末も2011年には10%未満だったのが2020年には39%と大きな変動を見せています。
上記のようにスマートフォンやタブレット型端末を利用するユーザーが増えていることから、パソコンやスマートフォン、タブレット型端末など端末をまたいでデータを収集する必要性が高まりました。
UAではそれぞれの端末ごとにデータ収集をする必要があったのが、GA4では端末をまたいでデータ測定が可能になりました。時代にあった測定をするためには、端末をまたいだ測定が必要なのです。
プライバシー問題の変化
CookieはWEBサイトに入力したログイン情報や閲覧したページなど、記録することができます。しかし、個人情報が抜かれるなどの問題が多くなりました。プライバシー問題に対して、2018年にEUにおいてGDPR(General Data Protection Reguration、一般データ保護規則)が施行されてから世界的にプライバシー保護に対して厳しくする動きが出始めました。
さらに2020年には米カリフォルニア州のCCPA(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法)でもプライバシー保護が開始されたり、日本でもプライバシー問題に対して取り組みがされるようになったりしました。
これらのこととCookieの危険性が話題になったことからCookieを使ってWEBページ分析をするUAの見直しがされたのです。
GA4が開発された理由
GA4が開発された理由として、以下の点が挙げられます。
- ・WEBサイトとアプリをまたいで計測する必要性
- ・マーケティング分析の質を上げる
- ・Cookieを使わない
- ・GDPRやCCPAに準拠したツール
- ・機械学習の必要性
WEBサイトとアプリをまたいで計測する必要性
UAはセクションごとの計測手法だったのですが、GA4ではイベントごとの計測ができるようになりました。近年パソコンのほかに、スマートフォンやアプリ、タブレット端末などさまざまな方法でネット検索をするユーザーが増えていることから、ユーザー単位でWEBとアプリ(スマートフォン)、タブレットをまたいで計測する必要性が高まっています。
マーケティング分析の質を上げる
UAではセッションごとの計測となります。例えば1人のユーザーが、1日にスマートフォン、タブレット、パソコンで検索をして最終的に商品を購入した場合、セッションは3回でコンバージョンは1回となるためコンバージョン率は33%となります。
しかしGA4などユーザーごとのカウントとなるので、1ユーザーで1コンバージョンとなりコンバージョン率は100%となります。このように1人のユーザーで複数端末で検索をすることは珍しいわけではありません。そのためUAからGA4に変えることで、コンバージョン率の分母が変わり、より正確な数値を出すことができます。
マーケティングにおいてコンバージョン率を重要な要素ととらえることが多いことから、より正確なコンバージョン率を出すことによりマーケティングの質を上げることができます。
Cookieを使わない
UAではCookieを使ってデータ収集をしていたのですが、GA4はCookieは仕様しません。スマートフォンやタブレット端末のユーザーが増えており、UAのようにCookieを使った計測方法では正しいデータを出すことが難しくなっています。
さらにプライバシー保護の観点で、Cookieに対する取り締まりが厳しくなっていることも、UAが終了する理由の一つです。
GDPRやCCPAに準拠したツール
UAはプライバシー保護において世界の一般的な保護関連のルールである、GDPRやCCPAに対応していませんでした。しかし、GA4はGDPRやCCPAに準拠しています。
GDPRとは
EUにおいて2018年5月25日に施行された一般データ保護規則であり、プライバシーの保護に対して厳格に規定をしています。対象はEU域内の各国であり、EU諸国とやりとりをする日本企業は十分気を付ける必要があります。
規則に違反した場合は、多額の清算金が課せられるだけではなくEU諸国から大きく評価を落としてしまいます。(参考:一般データ保護規則(GDPR)の条文(個人情報保護委員会))
GDPRにおける対象は、以下のように幅広くなっています。
- 本人が自身の個人データの削除を個人データの管理者に要求できる
- 自身の個人データを簡単に取得でき、別のサービスに再利用できる(データポータビリティ)
- 個人データの侵害を迅速に知ることができる
- 個人データの管理者は個人データ侵害に気付いた時から72時間以内に、規制当局へ当該個人データ侵害を通知することが求められ、また、将来的には本人への報告も求められる。
- サービスやシステムはデータ保護の観点で設計され、データ保護されることを基本概念とする
- 法令違反時の罰則強化
- 監視、暗号化、匿名化などのセキュリティ要件の明確化
引用:GDPR(EU一般データ保護規則)とは?日本企業が対応すべきポイントを考える(株式会社 日立製作所)
CCPAとは
世界的にプライバシー保護の規制が厳格化されるなか、2020年7月に執行されたのがCCPA(California Consumer Privacy Act、カリフォルニア州消費者プライバシー法)です。CCPAでは消費者の権利と事業者の義務を以下のように明確にしています。
参考:カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)を読み解く ~日本の個人情報保護法やGDPRとの違いは何か~(ニュートン・コンサルティング)
機械学習の必要性
GA4ではUAになかった機械学習の機能を搭載しています。機械学習は大量の複雑なデータを短時間で分析して適切な情報を提供します。そのため、人件費削減をすることができるほか、商品やサービスの質を上げ、売り上げにつなげることができます。
まとめ
2023年7月1日にUAが廃止され、今後はGA4を利用することになります。GA4では機械学習を使った高度な分析をすることにより、マーケティングに向いているツールです。UAとGA4はデータ共有をすることができないので、早めにGA4を導入し始めることをおすすめします。
もしGA4の導入が不安であれば、UAはそのままでまずはGA4を使ってみること方法があります。GA4はまったくUAと使い勝手や性能が違うので、完全に違うツールといっても過言ではありません。そのため、いち早くGA4を使ってみて、早急に慣れることが大切です。